ヘリオス(爆+轟・轟右)


爆豪24+轟23・轟右(書いていた時期は左右がはっきり定まっていなくて轟爆で進めていたのですが、続けられた場合はプロットを切り直すので爆か飯×轟になります)

卒業後八年と半年頃

対敵犯罪以外のヒーロー活動をメインにしながら兄の賠償を終え周りを見る余裕が出てきた轟と、一人予後の悪さからリハビリと出資金工面のため海外で六年ヒーロー活動をしてきた爆豪+A組+ホー

※序盤まで+調整前走り書き











老齢の患者の耳に配慮したテレビの倍音の耳障りと、初夏の湿りだした外気が窓辺から首裏

を舐める微熱に眉をしかめた時、キーを叩いていたノートPCが着信を告げた。

この八年数ヶ月ごとに不定期で送られるオールマイトからの一斉送信メールには、緑谷以外のA組メンバーのメールアドレスがccで連なっている。



―――みんな朗報だ。

シールド社からの引き渡し日が決まった。

間違いがあるといけないから、先方職員が直接成田空港まで空輸してくれる手筈になったよ。



ようやくか―――。

爆豪は気道を腹から抜ける深い呼吸を八年越しに吐いた気がした。

ワシントンD.C.で老父たちに囲まれ余生のような午後を送っていたわけではないが、メディカルセンターの匂いにも爆豪は敏感だった。

わだかまっていた耐久を吐いて捨てる。

気分が高揚してくる。

長かったがまだ遅くはない。

再建後の人工移動都市I・アイランドから派遣されるのはおそらくメリッサ・シールドだろう。

傷まみれのオールマイトのことを、治るまでパパの家にいておじ様と呼び親しんでいた。

談話室のテーブルに載せていたPCを閉じると、すぐにレクリエーションエリアを出て通話のできるロビーへ向かった。




入所して一年間、肩慣らしで被害区域復興と内勤とパトロールなど負担の少ない仕事をさせてもらい、ジーニアス事務所からの出向という形で六年半WHAニューヨーク支部に籍を置いた。

大戦予後からの高度治療を兼ねていることを了承され、比較的治安の良いニューヨーク州の市街をメインに学生の頃よりも半ば温いヒーロー活動をじっくり数打った。

もどかしいとはもう思わなかった。

それでも腐らなかったのは、出久の身体年齢や気持ちが凡庸に腐る前にクラスメイトからの引導を手渡したかったからだ。

手渡したいとか柄じゃない。

だが人体の限界を識ったこの身体は正直に脳を動かした。

出久にはきっとまだわからないし一生わからない。

昔から頭を切り替えたら変化も成長も刹那的で。

どこにどのフックをかければ欲しい青焼に繋がるか、透明な軌道が見えた。

そのとおりに動けている。

今はまずすぐ壊れない身体資本だ。

あと二十年ぐらいなら現役をやれる。

WHAニューヨーク支部の所長は急な退所申し出を快く諾とした。

入所時に、期限ははっきり決められないが目的を果たせたら日本に拠点を戻すことを話していたからスムーズに疎通できた。

「来月末、日本に帰る。……おう。目処がついたから今後はそっちで稼働する」

二、三帰国後の事務連絡を所長のジーニストと交わし、爆豪はロビーでの通話を終えた。

スライドした円柱ガラスの回転ドアが新たな患者を迎え、六月半ばの丸い夏陽が頬に巻き上がった。

爆豪にとって、棲みやすい季節が来る。



ロビーから戻るついでに、週ニ、三回右腕と心臓リハビリテーションの世話になっていたこのメディカルセンターへも今後の受診を断った。

あとから担当療法士にうるさく嘆かれるだろう。

診療待ちのために戻った談話室の大型テレビが、オーストラリアの森林火災がみたび発生し、鎮火せず数日変化がないことを報道していた。

アメリカの医療現場は一部の人間の要領が悪いのかオペレーションが雑なのか、待合時間も担当も一定じゃない。

もう日本に帰りてえと思わず舌打ちをしながらどさりとソファに腰かけたところに、担当療法士のクリスがやって来たが、爆豪ではなくテレビをぼう、と見つめていた。


「hey,バクゴー。あれ日本のヒーローじゃねえか?」

「あ?」

テレビの報道を見やると、爆豪は目を見張った。


白と赤の昔より短くなった直毛。

濃紺のヒーロースーツと白い調節機。

何であいつが。


それは過去の映像特集で半年前に鎮火は済んでいるらしく、報道陣にマイクを向けられたヒーローショートの隣には水属性の個性を持つマニュアルも控えていた。

いずれも大火事の中に潜ったのか肌もスーツも黒い煤と泥にまみれていた。

二人共に稼働地域は日本だったはずだ。

再び何であいつあんなとこにいんだ、という疑問と滑稽さが真っ先に浮かびながらも爆豪は凝視する。

轟は相変わらず無表情だが、それは消防隊含めて焦土と化したばかりの地元の森の前で安易に安心を唄えられないだろう。

「………」

少しがん決まったような気迫があって真摯に吊りあがり、目に力がある時のあいつだ。


『今回世界ヒーロー協会からの要請でオーストラリアへ出向なされたとか。他国の森林火災

の鎮火は規模も違いましたでしょう。先の日本の大戦では、大火を未然に防がれたとかー』


州ニュースのキャスターは日本のあの人的災害の細部をどこまで把握しているのかはわからないが、爆豪は黙って閉口し続けた。

今なら轟の英語の真意も聞き取れる。

六年半直接追っても見てもいなかった轟の抑揚のない肌は、煤汚れてはいてもやけに白かった。


『――俺の家はずっと家族関係が家の中を燃やし、その余波で身内の孤独がみんなの平穏な暮らしを焼きました。

先の大戦のように、間違う前に人が上手く介在すれば防げたはずのたくさんの業火を見てきました。

これからも要請があれば俺にできることをします。

WHAからの直接要請と予行訓練、ニューサウスウェールズ州の消防隊の皆さんに救援の機会をいただけたこと感謝しています』


淡々とかすれた低い声で話し終えたショートは、先輩格であるマニュアルに場を譲り画面から潔くはけた。

遠くでショートに加勢を請う救助隊員の叫びを聞く。

事務所から仕込まれ慣れたのか、無駄に詮索されるような締め方をしないあたり、やっぱり時間の経過を感じた。

マニュアルもショートにならうよう、大戦の戦禍になぞらえた現地住民への鼓舞と二次災害についての呼びかけを簡潔に話し、数分のヒーローインタビューは終わった。


『ーー現地で活動している消防隊はほぼ無償のボランティアで出動されています』

もしあのヒーローたちのような広域を鎮火できる要員が常駐できれば、火災区域の住民も心強く安心できるだろう。

当たり障りのない真っ当ごとをオーストラリア訛りの英語がまくしたてる。

焦土の木々のうしろから黒い煙幕が上がりだし、周囲が慌ただしくなった。

『また、州の非常事態管理局の担当者より寄付についてのお願いです。過剰な物資が増えることで施設内を圧迫してしまう二次災害などが起きています。観光で滞在するホテルや燃料、食事など、旅行に訪れる際は現地で是非調達してください。自宅からバッグを空にして何も持たない。それが地域経済の再建に大いに役立ちます』


そんなん知っとるわと内心でインタビュワーの女に毒づくと、やっぱ腐ってんなとすぐさま内省もしてじわりと湿った手のひらがばちっと爆発した。

周りに背中を曲げて座っていた老人たちがどよどよ喚き出し、手が滑っただけだわうるせえと口を突き出した。

「病院がオーストラリアじゃなくてよかった…。あんなところに生家があったらハリケーンより何も残らないし保険屋がパンクするよ…。バクゴーと同年代ぽい子だけど知ってるの?」

フェイマスパーソン?

重ねて問うクリスには瞳を思いきりすがめて、嫌な顔をして見せた。

アメリカビルボードの十位に入るか入らないかを繰り返している凡骨体を抱える爆豪をしょっちゅうからかうクリスに、轟の日本チャートは絶対言いたくなかった。

にやにや白い歯を見せ、ゆったりした南部なまりで言いたくないなら調べるよと常人よりも多い副手四本をひらめかせて、リハビリルームに爆豪を促した。

腹を絞るような深い吐息が二度目にあふれる。

群訝山荘跡の大火を直接見たわけじゃない。それどころじゃなかった。

氷と炎でどうやって山火事を消したんだよてめえといつまでもくだらない疑問とおかしさが湧き出る。

わけがわからないほど時間が経ち歳を取った。

やっと帰れるのか、と気が緩んだ。



「あいつは高校ん時のクソ舐めプ野郎だ」






深夜に予定していたズーム通話にそなえて、轟は舌当たりのいいほうじ茶のティーバッグを選んで、沸かした湯を湯呑みに注いだ。

対人通話に寄せて一応上は黒いカッターシャツを羽織ったが、下は部屋着の黒スウェットのまま文机の前の座椅子に腰かけた。

マグから一口茶を啜りながらノートPCを開き、zoomアプリを開く。

参加者が一人入室済のサインが灯り、主催の許諾を待っているボタンを押下してwebカメラをオンにする。

相手のカメラはオンでもオフでも好きにしていいと伝えている。

開いた通話画面にはハンドル名らしい名前が表記されていた。

「こっちの声、聞こえてるか?」

顔が見えないので、轟はマイクに誰何をした。

数秒の間衣擦れと小さな咳が聞こえたあとに、変声したばかりのような掠れた男児の声が流れてきた。

『…こんばんは、ショートさん』

「ショートでいい。こんばんは、夜遅くに悪いな」

『いえ…大丈夫です』

zoomカウンセリングで緊張をして話せなくなる子供は多かった。

増してビルボードチャートトップを席巻しているヒーローたちが相手ともなれば、目上の人間に対して接すればいいのか純粋に子供心に一ファンとしてタメ口で話していいのか迷うそ

うだ。

しかし、この子供に対しては通念どおりの印象は抱かなかった。

声が小さいのは、悩み事を大人にわかるように説明しなければいけないと気後れしているだけかもしれない。

まさか自分が抑揚を気にするようになるなんてと毎度のように脳裏を掠めながら、あまり朴訥にならないよう意識し声を和らげた。

「名前は?一応本人で間違いないか確認させてもらってんだ」

『……こうき』

「こうき。今何年だ?」

『中学三年』

行きたい高校を既に選び、試験の勉強にこれから追い込まれていく時期に入るんだろう。

「行きたい学校は決めたのか?」

「雄英のヒーロー科に行きたいけど…ヒーローに向いてるような個性じゃなくて…。研究職とか向いてるのかもしれないって」

どんな個性かと問うと、ぽつりとこぼした内容を聞いて轟は少し目を見張り、別タブで開いている少年の申込データの備考欄にメモを記した。

「お前も好きなヒーローとか、いるのか」

『……、…』

ここで初めて少年はもじつかせるような間を聞かせた。

轟に依頼したからと言ってすべてがすべて、自分のファンではないということを聞き続けていたから、構わずフォローする。

「別に俺じゃなくていいぞ。この時間の俺はカウンセラーもどきだ。気を遣うな」

『…大・爆・殺・神ダイナマイト』

途端轟も思わずふっと笑みをこぼした。

大・爆・殺・神ダイナマイトは小中学生にとってはわかりやすいアイコニックスターで、大人にはウケの悪い彼の性分でも子供にはヒーローカードのレートもとても高かった。

「爆豪か。派手だしいいよな」

『ん……』

気恥ずかしげに肯定する少年の声は嬉しそうだった。

轟もつられて微笑んだ。

爆豪自身が彼らと同じ精神年齢ではなく戦略センスというジャンルで級友の誰よりも賢いのを知ってはいるが、意識せずして頭のいい大人が子供と同じ距離に降りられるのはどういうことなんだろうといつも思う。

一人にあてるカウンセリング時間は四十分。

もっと純粋に好きなものだけを聞いてやりたかったが、本題を切り出した。

「あまり時間取れないのが悪いが、何か悩みがあったら言ってくれ」

大概の子供がここで少し息詰まる。

みんな本当のことを話したら、正しいことを言われて終わりだということを恐れている。

終わったら終わってしまう。

轟がここで子供の真意を見逃せば、大人を誰も信じなくなる。

わからない同世代の子供を馬鹿だと自分は全て読めると見下すようになる。

麗日が忘れないでと何度もそれを言っていた。

会話が続かず静かになるのは苦手ではない。

轟はじっくり答えを待っていた。

『……。困ってないのが、困ってる』

困っている、といったニュアンスの言葉尻ではなかった。

わかっている、諦めているという投げ出しに近い静けさだった。


何でもできるけど、みんなみたいにわからないふりできないんだ。


轟に対して補足が必要だと自ら気づいた少年は、ここで初めて知性を見せる声音で静かに言葉を置いた。

拾って欲しいとは思っていない化石のような無機的な置き物。

「……わかった。思ってること、ゆっくりでいい。詳しく聞かせてくれ」


轟の脳裏で、ふっと白金の髪の同級生が表情を消した顔を持ち上げた。

置かれた月の静けさのような化石は、汲まれようとは決してしてないのに気になるのだ。




積もるところ、いただいていた料金外をかなりオーバーして、深夜帯までサービスで話を聞いてやった。

ありがとう、ダイナマイトのこと参考になったと笑んだ声を最後に通話は切れた。


申込データの備考欄にはメモが枠欄をはみ出るくらいに増えていた。

明日外回りの休憩タイミングで、公安にいるホークスに共有することを業務タスクに入れる。

深夜三時を過ぎてすっかりふけこんだ青黒い夜のしじまに立ち上がり、硬いシャツを脱いで伸びをした。

ほうじ茶もすっかり飲み尽くして持ち上げた湯呑みの底に茶渋が固くこびりついてしまっていた。

睡眠時間が取れないときつい体質だったが、親の寝静まった深夜に相談したい子供が多かった。


高三の半ばで亡くなった兄の燈矢も、夏雄兄さんに夜中不満をぶつけていたと聞いた。

父にも兄にも相手にされず真夜中の兄の凍る心を思うと、あまり感情を動かされない轟でも時折胸がしんとすくむ気がする。

今自分がその年頃の子供を相手によく話をするから、当時はなかった人の中に潜り込む想像力が今更身についたのだろうか。

考える前に踏み込むことは血が流れる。痛みを伴う。身体も傷つく。信念は揺らぐ。

考えてぶつけることも声を張り上げ、怒鳴られ、意味がない縮まらないと組み伏せられる。

そう生きるのが八年でオートマティックな慣習になった。

大戦前に移った新しい丘陵の寮で、初日に部屋を訪れた飯田たちのうしろに爆豪の姿を見つけた時は驚いた。

お前そんな奴だったかと思う間もなく上がり込んできた飯田と切島、そのあとにゆっくり踏み込んできた爆豪が一番尊大に人のベッドに寝そべっていた。

寡黙を貫く爆豪を見ていると、言外にそれでいいんだという真実がわかる。

いつの間にか帰巣してる動物みてえだなと思ったら、ああ、俺の境遇がこいつらを安心させてやれてねえんだなと轟は感じた。

同時にじっくりと、ああ、俺は安心していると腑に落ちた。

本当に、簡単すぎることだったのだ。


父と共にいる場ではそこまで轟個人が非難や罵倒の的にはなることはなかったが、父の引退後に言われ続けていたところであまり何も感じることはなかった。

轟にも簡単なことを複雑に掻き乱し突き通し踏み荒らす世論や人間のことをもどかしく冷えた思いで見やる駄目なところはあるが、大丈夫だと他人にまで言えるようになったのだ。


リビングの座卓に戻り、キッチンシンクに水を満たした湯呑みを置いて、スウェットのポケットに入れていたスマホを取り出す。

オンライン通話中に何度かバイブしていたのに気がついていたが出動アラートではなかった

から普通のメールかコミュニケーションアプリだろう。

スワイプすると、見逃していたオールマイトからのccメール。

アプリには雄英A組グループに三件。

切島。上鳴。爆豪。

爆豪のものは個別チャットだった。

個別で轟からの連絡に返信されるものは、月一で必要な事務連絡のみで四年くらい前にやりとりは途絶えていた。


――爆豪のかっちゃん帰ってくるってよ!


――マジ?!さっそくみんなのオフ予定聞いちゃうぜ!さっき仕事かぶった相澤せんせに聞いて、休みの日の雄英借りれるって!懐かしの〜ハイツアライアンス!


――氷と炎でどうやって火事消すんじゃ!


最後の爆豪の言は意味がよくわからなかったため、向こうの時差も考えずに思わずすぐにレスポンスをした。


――何のことだ。科学の話ならわかんねえ


すぐに阿保とでも返事が返ってくると踏んでいたが、既読はつかなかった。

ニューヨーク州にいると聞いてはいたから、向こうは今はヒーロー稼働時間なのかもしれない。


歯を磨いて寝室に向かい、目覚ましツールを午前七時にセットする。

グループチャットを今のところ返信せずに確認したあと、緑谷を省いたオールマイトからの

一斉送信メールを読んで、ふっと嘆息した。

サポート開発などサイエンスの分野は微塵も詳しくはないが、八年もかかっていた代物だ。

卒業後に前者ccメーリングリストに共有されたオールマイトのアーマードスーツ集約データ動画より、更に人間工学的にも見た目にもヒーロースーツ然としたものになるということだ

った。

今をしっかり選んだ緑谷は、もしかしたらもっと不自由で必要な若い少年たちにと提供された善意を断るかもしれない。

だが、万が一そうはなったとしても黙ってはいない出資者たちがいる。

緑谷のノウハウを集約することで、アーマードスーツに続いて一大サポート事業ビジネスの貢献になるのだ。

上掛けにかけた両腕を組み目を閉じる。

自分が人を助けてきた分止まぬ軌跡が今も続くことを、きっと泣いて迷うのかもしれない緑谷に対してではなく。

誰でもヒーローになれるという切実な夢を叶えたヒーローのふてくされて轟を睨めつけ続けた少年爆豪の面影に、よかったなと声に出して呟いた。





↓以下はまだ調整前の穴あき走り書きです。ややホー焦、飯轟気味な部分もあります。




「久しぶり、焦凍くん。いや、いい加減常務って呼んだほうがいいかなあ。エンデヴァーさん元気?」

「まあ…毎日鍛えてるみたいです。また手記を書いてるみてえなこと聞きました」

「あ、それってもしかして」

「あいつ電子機器てんで駄目だから時間あんのに全然書き上がらねえ」


亡き長男燈矢へ、から始まり、二年ごとに一冊ずつ家族一人単位に向けて懺悔本をしたためている。


「やーっぱり。俺、買ってるもんね毎回。保管用と二冊ずつ!」

「礼を、言えばいいのかわかんねえけど……。最近ではむしろ面白がられて本が売れてるみたいです」

「次でやっと焦凍くん回だよね〜。楽しみだなあ〜」

「…別に見たくねえ」


「ああ、そうだ。先週送ってくれた子のデータ見たよ。案内もしてくれたんだよね、雄英と公安の」

死柄木や壊理のような、犯罪組織に攫われ悪用が危ぶまれる強個性を持った子供たち。

天道をも左右する、人災兵器にもなりうるアンコントロールウェポン。

飯田や麗日たちチームの全国の学校を巡りカウンセリングを行う活動時に轟のように個性婚で生まれた児童がトガや兄のように歪み生きる子もやはりいたけど導くのがうんと難しい、

もしかしたら轟のくんの話なら聞いてくれる子供もいるのかもしれないという話に触発さ

れ、自分も兄の死後その方向性で力を伸ばす指導を公安と自治体通して出張したりしている

マスコミの目を意識してマンツーマン個別申し込み制、年齢制限は就学児十八歳まで、今はズームやメール、チャットメイン

夜間に主に子供のお小遣いでも申し込めるごく低料金で引き受けている

最初にみんなからは女子が来そうだねたくさんて言われてたが意外に男子ばかりだったし俺の下に弟とかいなかったから嬉しいと思ってる

飯田たちの遠征で各学校に取り組みをついでに宣伝してもらっている


『君は誰よりも強個性で強いし賢い逸材だけど、ショートくんには第三の他者を介入した評価や信憑性が長らく必要だ』

と教えてくれたのは轟家の後見人を自称し、名の通り後押しをし続けているホークスだった。

卒業以降その助言を元になるべく人に繋ぎを頼んでいた。


「そろそろ君も二十四でしょ?スーツの習得訓練が終わったらデクくんも復帰する。世間は無個性の英雄の復帰と進んだ復興を重ね合わせては心が躍りようやくの安心を迎える。我慢の頃合いでしょ」

「殴られ慣れちゃダメだよ。君は末子だからなのか性格なのか、ご家族たちと違って愛が底なしそうだから。何をどれだけ助けても言われても叩かれてもそういうもんかって目がぼんやりしてくるよ?」

「ぼんやり、ですか」


みんなのサンドバッグになってた分、これからは物分かり

轟家は引退した父の代わりにショートが多く負担することになる荼毘戦の賠償があるので爆豪にお前は出資負担はいいと言われていた

それでも負担したいと言われることを見越し、俺がてめえの分肩代わりするからとっととやること済ませてあとから返せ

みんな銀行の融資ローンを組んでまでがんばってくれたし博士への口利きやプランを考えてくれた

未消化分はデクが復帰したら目一杯助けてやれと

父の長年の功績による財産と実家の売却、轟の早期トップ入りもあり、二年いっぱいで賠償は済んだ、休みなしでめっちゃ働いてたし

エンデヴァー事務所に所属しながら海外で単価上げてフリーでやれば稼げると爆豪にアドバイス受けていた

その間生活費や飲食は姉や兄が世話するとそれぞれ家に招かれ食べていた

A組のみんなや特に自身の比較的安全な裏仕事を回してくれていた先生と稼ぐためのアドバイスを考えてくれた緑谷と爆豪には礼を改めて言いたかった

卒業後は負傷しヒーローを引退した父を代表取締役所長とし、専務取締役副所長をバーニンと先代故祖父の会計税理士を務めていた男性が兼任、轟は社員として二年務めたあと常務取

締役所長に就任した。

主に現場に出て十年は上位下達を学んだほうがいいと言われそうしたし、このままバーニン

に経営も教えてもらいながら基本は現場優先でいようと決めている

※ヒーロー志望じゃなくても自分のような生い立ちで苦しむ若者の後押しをするため

エンデヴァー事務所所属のまましばらく広域火に耐え火を抑える特性が復興後とても重宝され、しばらくずっと災害救助要員がメインで活動

氷を炎で蒸発させ大量の降水量に変えれるよういろいろ苦心した結果、海外の長期に渡る森林火災時は派遣されることも多い

一年に一度あるかないかで交通網が災害で止まった際飯田たちとチームアップを組み遠方に文字通り飛ぶこともある

復興中の八年は対敵対策の方が稀になったが轟家の風評が落ち着くまでの間父やホークスもそれを勧めてくれたし自身も人に対応するよりは楽なのでそれでいいと思っている

父が長年作り上げたものは確かに父やそれに師事する者たちの功績なのでそれを認め学び続けることにした、独立は今のところ考えてない

共に歩みを進めた家族や家を守ることに喜びを覚えたため

父には縁談を特に勧められることもなく独りでいても守る者を作ったとしても家の後継は気にするな、夏雄や冬美が血を継いでくれる、お前はお前の好きに生きろと言われている




翌月爆豪が日本に活動場所を変えるため帰国、

ちょうどその翌月から緑谷がスーツ着装しての訓練を終えて実働するのがかぶり、壮行会で喧嘩する

爆豪と日本で働くA組久々に会う、みんな揃うし出久の

轟はやっと直接借りを返せると爆豪と話そうとするが、切島たちに囲まれててかつ自分も麗日と飯田とのカウンセリング打ち合わせでA組の教室で話すことに

ラインだけとりあえずおくっとく


――おかえり。肩代わりの礼をしたいから飯行ける日教えてくれ



――ゆーえーいるのに直接言えや



――わかった、あとから時間くれ




麗日たちとの打ち合わせでカウンセリングは一時的にと考えていたがお前たちにこのまま附

随する形でゆるくやってみると告げる

出久の復帰が決めてとなって、みんながそれぞれの道に集中できる道が開けたと麗日の話を聞いて思う

妊娠三ヶ月中、出産まて事務仕事に切り替えた麗日と飯田とミーティング(原作ではまだこ

の時点でくっついていないから年齢を変更するかも…)

いつもの情報交換会

A組のサポートアイテム提供により翌年から教師兼ヒーローに再臨できた出久と話し合ってよ

うやく子供を作ることを決めた

個性のない子が生まれる確率が高いと何度も話し合って迷っていたがヒーローに舞い戻れた

自信から自分が無個性に煩わされていたら子供たちにとって侮辱だ

自分が何度もなりたいものになれるって言い切ってあげるんだと言われて踏み切った

名前は決めてるのかと聞くと、言い渋る麗日

「…つけたい名前は決めてるけど、まだ話してないんよ」

「緑谷にか」

「うん」

「瀕死の私に血を与えて、目の前で亡くなっちゃった、とても素敵な子の名前」

「トガヒミコくん…か」

「うん…そんなの…やっぱダメだよねぇ〜!自分でもわかってるんだ」


「…子供に生涯そいつを重ねて見たり、罪滅ぼしのつもりじゃねえなら、いいんじゃねえか」


「お前がいい意味でそいつを覚えていてやりてえなら、それで」


「…轟くんから出る言葉だから、すっごく説得力、あるなあ…」

「轟くんは、元々の性格が懐深いんだろうな。自分をいちから塗り替えること、家族や兄弟のことに関しては、誰よりも一家言あるからな。一発が重いんだ」

「殴った覚えはねえよ、俺にはそれしかねえだけで」


「…うんっ、決めた」

「麗日?」

「そうだよね。私、デクくんにもデクくんの赤ちゃんにも、これからたくさんたくさんヒミコちゃんみたいに素直に好きに生きてほしいから。一文字だけ…一文字だけもらうことにする」

「うむ!女の子なら麗日くんに似て勇気と芯のある子になるぞきっと!」

「いいと思う。緑谷にもちゃんと言えよ」

「うん。今日ようやく言える」

「親もそういうもんだってこと、今はわかるしな」


父に好きに生きろと言われていることを思い出す、親ってやっぱそういう気持ちになるもんなんだなと初めて父親の立場である父を現実的に実感する

うちはだめだったが間違えて終わらなかった

「あはは、なにゆってんの、轟くん。花の独身じゃんまだあ〜」

「お前らのおかげで、生徒と話す機会増えたし」

「なるほど、轟くんはみんなのお父さんの気持ちになってカウンセリングを行なっていたのか!」

「おお〜、父性の芽生え…!」

「親じゃねえ」


「ごめ…ちょっと吐き気するからトイレ行くねぇ~…あとでね~」




教室に戻る時飯田と二人

「飯田は結婚しないのか」

「独身同士、恋愛はよくわからないよな!」

とロボロボする飯田にロボみたいだぞとつっこむ

「…ないといえば嘘になる。ヒーローになってすぐ結婚した兄さんと違って俺は機微に疎いから、今年に入ってからお見合いを勧められている」

「…そうか」


家族関係でこじれていた轟に対しては気を遣ってるのか聞いてこないことがありがたかった

※家の事情をみんな知ってるから無理に結婚や付き合いを勧めてくることはしないのが気楽だった






「来週の火曜、平日夜八時」

「お」

※一年ハイツアライアンスのレク室に集まりランチラッシュに依頼していたオードブルを食べつつ歓談しまったり中

爆豪から声かけられる

「来週…シフト時間以降何もなければ大丈夫だ。スケジュール入れる」


じっと轟に見られると爆豪は眉をしかめ

「んだよ」

「……いや、こないだ夜中カウンセリングで話した子供がお前に似てたから、思い出した。お前が好きだって言ってた」

「………」

刮目するような顔をして轟を見たあと

「…話しがよく見えねえな相変わらず」

「半年くらい麗日たちとチームアップ組んで、夜だけズームで児童相談してんだ。個性つうか…家族の問題の」

家族問題と聞いて一瞬口ごもり止まって

「は?ポヤッポヤがマセガキの相談だァ?大学も行ってねえやつが資格とか取れねえだろが」

「麗日たちの働きかけで公安委員会認定になった催しだから、指定された公認心理士からみんなで講習受けた」

「つーかてめえ向こうで…、」

電話呼び出し

「悪ぃ。事務所の部下からだ。来週話す」

-






「ここの瓦そばのつゆがうめえんだ」

「売りは鉄板焼きじゃねえんかよ」

個室のグレードいい鉄板焼き屋、席はカウンターで横並び、右に爆豪、左に轟

爆豪が左利きになったのでよく手がぶつかる(原作では右手に戻ってたから多分変える)

逆になったほうがいいかと言うが、最初にそう言っただろうが!と叱られ俺は気にしねえと

そのまま座る


一年は日本ならではの依頼対応に久々に慣れるためジーニアス事務所預かりのフリーでやるところ

爆豪は卒業後右腕や心臓の補強治癒を極めるため海外の権威に一時期三年世話になったついでに歩合が高い海外のチームで出資金のため稼いでいた

一番自分が多く出してやるべきだとしていたし出久の勘がなるべく鈍らない若いうちに渡すべきだと頑張っていた

自分が生まれオールマイトに憧れた故郷である日本に経済を回し貢献するのが1番の帰結だと

思っているので全国離島を巡る事務所を一年後に作る予定

火力を扱うため自衛隊とも連携している

主に敵や犯罪対策がメイン

※復興期間中にヒーローを中心とした自衛隊組織が公安発足によってできる、無個性の者も公式サポートアイテム補強で入れる、なるべく海外の貴重なヒーローの国外での犠牲を減らし自国でまかなうためホークスが決めた


「噂ァ聞いたぜえ?てめえはすっかりレスキュー隊員のナリになっちまったみてえじゃねえ

か」

「動物に詳しくなった」

「何でだよッ!」

「広域でマイクロフォグ化できるようになってから海外の森林火災の抑止に呼ばれるようになっちまって、そこに住んでるコアラとか、ワラビーとか…危機反応でどう動くか生態勉強して」

「…どこに向かっとんじゃてめえは」

英語できるし、とのたまうのに眉をしかめる

「…ケッ!ご自慢の英才教育の賜物かよ」

「お前も今は話せるだろ、英語」


「生態系の循環て意味で自然発生するもんより、人的発生のケースが今は多いって聞いてからは、積極的に」


「人の都合で派生するものに巻き込まれる弱い奴に弱え」

「つうかよ…対敵会時が留守ってえなら大分腕ェ鈍ってんじゃねえのか」

「それは勿論勘が死なねえように、定期的に間に挟んでる。今は夜間にカウンセリングみて

えなこともしてるし確かに目下減っちゃあいるな」

あまり右手を積極的に使わないようにする癖がついてる爆豪に気がつく

そういえば食うのも書くのも左利きだった

「…ポヤッポヤがカウンセリングだあ?ジャリガキどもに逆に遊ばれてんじゃねえかてめえのことだから」

「たまになんか言うと、えっ…とか絶句してる時はあるな」

「ほォら見ろ!大抵の今頃のガキはてめえより警戒心強えしすぐ諦めて引き下がんだよ。んで事なかれに連続的な不変環境への依存心が強え」

「何で知ってんだ。まさかお前もカ、」

「するわきゃねーだろめんどくせぇ!向こうはヒーローなんぞがなんなくても専門のヤツがごろごろいんだよ」

大きい案件で死亡数や負傷が多ければ大人にまで大抵はカウンセラー受診を推奨される

「そうか」


「俺も向こう行くようになってから、まずは自分を大事にしなきゃならねえこと、世界ヒー

ロー協会のシステムで習慣づけられたもんな…」

「……。てめえに似たようなガキ擁護してんのはよ。家んこと、まだ全部片付いてねえんか」

「いや。逆だ。終わって余裕できたんだ」

「……」

「家のことで、払うもんも、見なきゃならねえもんもたくさんあったから、過半数自然相手に身体張ってるのは楽だった」


「助けても助けなくても、助けた野性の動物は何も言わねえ」


「でも助けてみれば、悲痛な声で鳴いていつも飲まねえ倍の量の水を欲しがる」


「何をしてやれば最適解かシンプルだからエゴでも何でもねえ。それに力を貸してやることがすげえやりがいになったよ」


「どんなやつがどう助けるなんて見方、彼らには関係ねえから」


「お前が出資のことで俺に融通利かせてくれたおかげで、思ったより早く遺族たちに補償し終わった。ありがとな」

「」


ああ、そうだ、お前は困ってねえ

お前は困ってねえから危ねえんだ

溜め込んで溢れずずっと一人で平気だった麗日に久々に会って考えたお前のこと

俺は簡単に壊れちまう人しか見てこなかったし、自分がわりと運良く環境に恵まれて壊れねえでこれたから

先を行ってた周りの行動とか変化をよく見てた






「着いてくんな!」

※ずっとデクの出資資金と自身のリハビリ治療のため一人で動いていて孤独なところを無理やり突かれて泣きそうになり逃げる


「悪ィな」


俺はA組全員の奴らには強引にいくことにしてんだ


お前が一番厄介だ、爆豪